家の中を化学薬品を使わずに綺麗に保ちたいという願いから私が手に取ったのは重曹でありこれが全ての悲劇の始まりになるとはその時は夢にも思っていませんでした。インターネット上のまとめサイトやSNSの投稿ではトイレタンクの中に重曹を半カップほど入れて一晩放置するだけで黒カビや水垢が綺麗に落ちるという魔法のようなライフハックが数多く紹介されており私はその言葉を鵜呑みにして週に一度の定期的な重曹メンテナンスを欠かさずに行っていました。最初の数ヶ月は確かにタンクの中が綺麗になったような気がして満足感に浸っていましたが半年が経過した頃に異変は突如として現れました。トイレを流した後にいつまでもチョロチョロという小さな水の音が止まらなくなり便器の中を覗き込むと常にわずかな水の筋が流れていることに気づいたのです。最初はレバーの戻りが悪いだけかと思いましたが次第に水の止まりが悪化し水道代の請求額が以前の倍近くに跳ね上がったことでようやく私は事の重大さを認識し専門の水道修理業者を呼ぶことにしました。作業員の方がタンクの重い蓋を開けて中を確認した瞬間に発した言葉は重曹が原因ですねという衝撃的なものでした。見せてもらったタンクの底には溶けきらなかった重曹の白い粉が固まって泥のような堆積物となっておりそれが排水口を塞ぐためのゴムフロートという部品にびっしりと付着して密閉を妨げていたのです。さらに深刻だったのは重曹の弱アルカリ成分が長期間にわたってゴムに接触し続けたことでゴムそのものが変質し表面がドロドロに溶けてしまっていたことでした。この状態ではどれだけ掃除をしても二度と隙間を埋めることはできずゴムフロートと周辺のパッキンを全て新品に交換しなければならず技術料や出張費を含めて二万円近い出費を強いられることになりました。作業員の方は最近ネットの情報を信じて重曹で故障させる人が後を絶たないと溜息をつきながら教えてくれましたが重曹は決して万能ではなく特に精密な水位制御が必要なタンク内では粒子が研磨剤のように可動部を傷つけたり化学反応で素材を劣化させたりするリスクが非常に高いということを痛感しました。良かれと思って始めたエコ掃除が結果として高額な修理代と大切な資源である水の浪費を招いた事実は私にとって大きな教訓となりそれ以来私はメーカーが推奨する専用の洗剤以外は一切タンクに入れないことを誓いました。情報の表面だけを掬い取り製品の構造を無視して自己流のメンテナンスを行うことの恐ろしさを身をもって体験した私は同じような悩みを抱える人々に対して安易な重曹利用の危険性を強く訴えたいと考えています。
重曹掃除の落とし穴とトイレタンクが故障した実体験の記録