水道修理の現場で数え切れないほどの故障したトイレタンクと向き合ってきた私が断言できるのは多くのトラブルは過剰な掃除や誤った知識によるお手入れによって引き起こされているということです。特に最近では重曹をタンクに入れて放置するという方法が広まっていますがこれは水道設備のプロからすれば非常に恐ろしい行為であり本来であれば十年以上持つはずの部品寿命をわずか一年で奪ってしまう可能性を秘めています。トイレタンク内を清潔に保ちたいという気持ちは理解できますがタンク内部は常に水が循環しており本来であればそれほど頻繁に強力な洗剤で洗う必要はなくもし汚れが気になる場合でもメーカーが指定する中性洗剤を使用し柔らかいスポンジで優しく汚れを拭き取る程度で十分なのです。重曹の問題点はその不溶性とアルカリ性にありタンクの底に溜まった粉末は水の流れを阻害するだけでなくボールタップのパッキンという極めて小さな部品の隙間に挟まり込み止水機能を麻痺させます。またタンク内の水は飲用ではないものの排水されれば環境に負荷を与えるため適切な洗剤を適切な量使うことが重要ですが重曹を大量に使い続ければタンク内部の部品のみならず配管全体の金属部分を腐食させる原因にもなりかねません。もしどうしても重曹を使いたいというのであればタンクの中に直接入れるのではなく便器のボウル内に振りかけてブラシで擦る掃除に限定すべきでありタンクというブラックボックスに関しては触らないことが最善のメンテナンスになることさえあります。どうしてもタンク内のカビや臭いが気になるという方は置くだけのタイプの洗浄剤や自動洗浄システムを導入するのが安全ですがそれらを使用する場合も必ずそのトイレの型番と相性が良いかを確認しなければなりません。修理にお伺いしたお宅で重曹が原因で部品がボロボロになっているのを見かけるたびに正しい知識さえあれば数万円の修理代を支払わずに済んだのにと残念な気持ちになります。住まいのメンテナンスにおいて最も大切なのは自分の感覚で判断するのではなく製品を作ったメーカーの指示に従うことでありそれが最も安価で最も効果的でそして最も故障から遠ざかる方法であるということを忘れないでいただきたいのです。