私たちが現場に呼ばれる際、最も多い相談内容の一つがキッチンの排水不良です。そのほとんどの原因は、排水口付近に溜まったドロドロとした汚れが配管の深くまで到達し、固着してしまっていることにあります。ある事例では、築十年のマンションで排水が全く流れなくなり、床下にまで水が染み出してしまったケースがありました。調査の結果、原因は長年流し続けられた微量の油でした。油は冷えると固まる性質がありますが、そこに洗剤の溶け残しや細かな食材のカスが混ざり合い、排水口から配管の曲がり角にかけて巨大なドロドロの塊を形成していたのです。このような状態になると、市販の洗浄剤を何度流しても表面をわずかに溶かすだけで、中心部にある強固な詰まりを除去することはできません。私たちは特殊なワイヤー工具や、一平方センチメートルあたり百キログラム以上の圧力をかける高圧洗浄機を使用して、これらを粉砕して取り除きます。作業後の配管からは、まるで石鹸の塊のような、異臭を放つ白い固形物が大量に出てくることがよくあります。お客様は決まって、そんなに油を流した覚えはないと仰いますが、日々の炒め物や揚げ物の鍋を洗う際に混入するわずかな油の蓄積が、数年の歳月を経てこのような事態を招くのです。これを防ぐための解決策は至ってシンプルです。まず、油汚れのひどい食器や鍋は必ず紙で拭き取ってから洗うこと。そして、一日の終わりにシンクを片付ける際、排水口のゴミ受けを外してワントラップの周囲を直接洗うことです。ドロドロとしたヌメリは細菌のバリアであり、これが形成される前に物理的な刺激を与えて破壊することが、最も安上がりで確実なメンテナンスなのです。もし、水の流れが以前より少しでも遅くなったと感じたり、流す際にコポコポという音が聞こえ始めたりしたら、それは排水路が狭まっている警告信号です。完全に詰まって家の中が水浸しになる前に、早めの点検と清掃を心がけてください。プロを呼ぶコストを考えれば、日々のほんの少しの注意がいかに経済的であるかが分かるはずです。
水道業者が語るキッチン排水口のトラブル事例と解決策