あれは忘れもしない数年前の夏の夜のことでした。その日は夕方からバケツをひっくり返したような激しい雷雨に見舞われ、窓を叩く激しい雨音を聞きながら、私はリビングでくつろいでいました。ふと足元に違和感を覚え、目をやると、信じられないことにカーテンの裾が水に濡れ、フローリングにじわじわと水溜まりが広がっていたのです。パニックになりながら窓の外を見ると、そこには見たこともない光景が広がっていました。ベランダが完全に冠水し、溜まった水の高さはサッシの下枠を超えようとしていたのです。慌てて裸足でベランダに飛び出し、豪雨の中で排水口を探しましたが、濁った水の下でどこに排水口があるのかさえすぐには分かりませんでした。手探りで排水口を探し当てたとき、指先に触れたのは、大量の枯れ葉と泥、そして以前風で飛ばされたことに気づかなかった小さなビニール袋の塊でした。それらがストレーナーを完全に覆い隠し、完璧な蓋を形成していたのです。ずぶ濡れになりながらそのゴミを取り除いた瞬間、ゴゴゴという凄まじい音とともに水が吸い込まれていきましたが、室内に入り込んだ水の処理にはその後何時間もかかりました。翌日、明るいところでベランダを点検してみると、隅の方には砂埃が固まった泥状の塊がいくつもあり、エアコンの室外機から出るドレンホースの周りにも洗濯物から出たと思われる綿埃がびっしりと付着していました。これまで、ベランダなんて雨が降れば勝手に綺麗になるものだと思い込んでいた自分の無知が、この惨事を招いたのだと痛感しました。もしあの時、浸水に気づくのがあと十分遅れていたら、階下の住人の天井まで水が漏れていたかもしれません。そうなれば、単なる掃除の失敗では済まされない損害賠償の問題になっていたでしょう。それ以来、私は月に一度必ずベランダの排水溝を点検することを自分に課しています。特に台風が近づいているという予報が出たときには、真っ先に排水口のストレーナーを外して奥まで異物がないか確認するようになりました。あの時の、部屋の中に水が侵入してくる恐怖と、ずぶ濡れになりながらゴミを掻き出した虚しさは二度と味わいたくありません。ベランダの排水溝の詰まりは、決して他人事ではなく、ほんの少しの油断で誰にでも起こりうる家庭の危機なのだと、身をもって学びました。
突然の豪雨でベランダが浸水した私の苦い経験