家の中で誰もトイレを使っていないのに、突然「ゴーッ」と水が流れる音がして、しばらくすると静かになる。深夜にこの音を聞くと、まるで幽霊でもいるかのような不気味さを感じますが、これは心霊現象ではなく、トイレタンクの内部で起きている、非常に典型的な「水漏れ」のサインです。この現象の原因は、タンクの底にあるゴム製のフタ「フロートバルブ(ゴムフロート)」の、ごくわずかな劣化にあります。フロートバルブは、タンクの水を便器に流すための栓の役割をしていますが、長年の使用でゴムが硬化したり、変形したり、あるいは表面にぬめりが付いたりすると、排水口との間にミクロの隙間ができてしまいます。この隙間から、タンクに溜まった水が、本当に少量ずつ、時間をかけて便器側へと漏れ出していきます。この時の水の流れは、あまりに静かなため、ほとんど音はしません。しかし、水は確実に減り続けています。そして、タンク内の水位が一定のレベルまで下がると、今度は給水装置である「ボールタップ」が「水が減った」と感知し、減った分の水を補給するために、自動的に給水を開始します。この、突然始まる給水の音が「ゴーッ」という音の正体なのです。そして、規定の水位まで水が溜まると、ボールタップは正常に給水を停止するため、音も自然に止まります。この「少しずつ水が漏れる→水位が下がる→自動で給水が始まる→給水が止まる」というサイクルが、数時間に一度、あるいは一日に数回、不定期に繰り返されるため、まるでトイレが勝手に水を流しているかのように感じられるのです。この「幽霊現象」は、フロートバルブが寿命を迎えつつある明確な証拠。放置すれば、やがて漏れる水の量が増え、水道代の高騰に繋がります。早めの部品交換をお勧めします。