壁の中にうっすらと浮かぶシミ。しかし、その原因となっている水漏れが、壁のどこで起きているのかを正確に特定するのは、実は至難の業です。闇雲に壁や床を壊してしまっては、修理費用がかさむばかりか、全く見当違いの場所を傷つけてしまうことにもなりかねません。そこで頼りになるのが、漏水の原因箇所をピンポイントで探し出す、専門業者が持つ特別な調査技術です。 漏水調査の基本は、まず五感を駆使した調査から始まります。壁紙の剥がれや床のきしみといった目に見える変化を確認する「目視調査」や、壁を軽く叩いてみて、その音の響き方の違いから内部の異常を推測する「打音調査」などです。しかし、漏水の多くは壁の内部やコンクリートの下など、簡単には見えない場所で発生しています。そこで登場するのが、より科学的な調査機器です。 その代表的なものが「音聴調査」です。これは、非常に感度の高いマイクのような機器(音聴棒)を配管が通っていると思われる壁や床に当て、水が漏れ出す時に発する微かな音を聞き分けるというものです。熟練した技術者は、その音の大小や周波数の違いから、漏水箇所を数センチの誤差で特定することができます。まさに、建物の声を聞く聴診器のような技術と言えるでしょう。 さらに近年では、「サーモグラフィー調査」も広く活用されています。これは、物質が発する赤外線を感知して温度の違いを色で表示する特殊なカメラを使う方法です。水が漏れている箇所は、その気化熱によって周囲よりもわずかに温度が低くなります。サーモグラフィーカメラは、その微細な温度変化を捉え、壁や床を壊すことなく、水が広がっている範囲を可視化してくれるのです。 これらの専門的な調査によって、漏水の原因を正確に特定することが、無駄な解体作業を避け、結果的に修理費用と時間を最小限に抑えることに繋がります。もし原因不明の漏水に悩んでいるのなら、自己判断で壁に手をつける前に、こうしたプロの調査技術を持つ業者に相談することが、最も確実で賢明な選択と言えるでしょう。